るくすの日記 ~ Out_Of_Range ~

主にプログラミング関係

学生がアメリカの大学院へ行く方法。研究員という選択肢

0. はじめに

久しぶりのブログ記事投稿で、いきなりポエムを書きます。技術的な記事じゃないです。

今回は学部や修士の学生が、アメリカの大学院へ進学、ないし一定期間滞在させてもらう方法の一つを実際に私の体験を元に書きます。
以前こういうツイートをしたら、


どういう経緯で行くことになったのか、書類等はどうしたのか等の質問が来たので、せっかくなので記事としてまとめてしまいます。

海外進出を視野に入れている学生の皆さんの参考になれば幸いです。

私は現在大学院修士1年生で特にOSや仮想マシンモニター、ファームウェアといったシステムソフトウェアをターゲットとした攻撃やその対策技術を研究しています。
また今年の10月から1年ほどこちらの大学院を休学し、カーネギーメロン大学(CMU)のCyLabという研究室で研究員をやる事になっています。
ちなみになぜ研究員かというと、うちの大学はCMUと交換留学制度を持っておらず、いわゆる普通の留学ではいけないため、研究員として雇ってもらうという形になったからです。

CMUを選んだ理由は、先方の研究分野が私の専門に深く関連している事、そしてその分野では最先端を走っている事が挙げられます。
特にCyLabのいくつかの研究室は、ネイティブソフトウェアのマシン語レベルでの脆弱性検出技術や攻撃コード生成技術を得意としています。

また、研究の質も去ることながらCTF(Capture The Flag)やハッキングカンファレンスといったアクティビティにもかなり積極的で、学生の気力、モチベーションも非常に高いイメージがあります。
過去にはGeorge Hotzが在籍していた事もあります。

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DEFCON参加時のPPP(CMUのCTFチーム)。写真真ん中左George Hotzがいますね。 https://www.ithome.com.tw/news/97998 より



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CyLab Security & Privacy Institute | CMU Engineering

1. 経緯

そもそも私は去年の秋ごろまでは海外大学院進学はそこまで本気で考えていませんでした。勿論シリコンバレーで働くというのは魅力的で、
将来的にその道も考えてはいましたが、日本の大学院修士卒で新卒でいきなりアメリカに行くのはハイリスクだからです。これはH1ビザが必ずしも取得できるとは限らないため、
就職先が決まったは良いがビザが取れずに入国できず、結果的にいきなり無職になる可能性があるからです。

よって、一番現実的な方法は一旦外資系企業の日本支社に入社し、そこからL1ビザを使ってアメリカの本社に異動するという手法です。
実際Googleplexで働く日本人は、多くがこのL1ビザで日本支社から来た人だそうです。

そして恐らく次に現実的な方法が、海外の大学院(Master or Ph.D)へ進学して卒業後にH1ビザ取得を行うという物になります。

で、個人的には海外に行くとしても、前者のL1ビザによるパスを考えていました。

ところが去年の秋頃、東京大学竹内郁雄先生から突然「海外に興味は無いか。あるなら文科省の留学ファイナンシャルサポート制度の推薦状を私から書くことが出来る」というメールを頂きました。

調べてみるとそのファイナンシャルサポートは留学期間中の毎月の生活費相当の補助金をだしてくれるという物でした。

一応海外の大学院には興味があったので、せっかくだし応募してみようという事で推薦状をお願いしたのが始まりです。

2. 受け入れ先との交渉開始

ファイナンシャルサポート制度に応募するには、既にある程度受け入れ先大学を決めて交渉に入っている必要があります。
私は留学するならカーネギーメロン大学しかないと考えていたので、まずこちらの大学でセキュリティを専門にしていらっしゃるM教授(名前は伏せますが、業界では有名な方です)に、
「こういう経緯でCMUのCyLabに行きたい」とメールをしました。すると丁度M教授の元教え子で、今はとある大学の教員をされていらっしゃる方(I先生とします)が
現在CMUに滞在しているとの事で、その方を通して先方に連絡を取っていただきました。

CMUは私立大学であり、学費が非常に高額であるため私は無給の代わりに学費を払う必要のないResearch Assistant(RA)のポジションをお願いしました。
しかしながら先方からは「RAのポジションは大学としては無い。研究室の教員が独自予算で採用する客員研究員というポジションはあるが、ポスドク相当だろう」と返事が来ました。

実際CMUに滞在しているI先生も、この客員研究員というポジションだそうです。
流石にポスドク相当と言われると、これは私には無理かと諦めていました。

3. レジュメを送ってみる

やはり現実はそんなに甘くないかと諦めつつ、毎日のようにSplatoonをしていた所、ある日こちらの大学の指導教員に「ダメ元でレジュメとか送ってみれば?」と言われました。

まあ送るだけならと指導教員に添削してもらいながらレジュメとカバーレターをI先生経由でCMUに送ってもらいました。
するとCyLabのディレクターをされている方達から、
「いいね。君に興味がある先生を探してみる」とお返事を頂きそれからわずか1週間程度で
Maverick Woo先生という方から、
「Impressiveなレジュメを有り難う。非常に素晴らしいね君は。喜んで客員研究員としてホストするよ」とお返事が来ました。

いや、いけるんかい!!

てなわけで、レジュメを送ったら知らない間に決まってました。

ちなみにレジュメは自分の業績なんかを網羅的に書いていくだけなのですが、どちらかというと重要なのはカバーレターの方です。
こちらがいわゆるアイキャッチの役割をする書類で、自分がどんな研究、活動をやってきて、なぜCyLabに入りたいか、
入って何をしたいかを簡単に要約して書きました。

恥ずかしいので現物は載せませんが、
WebKitエクスプロイトとカーネルエクスプロイトを開発する事でPS4Jailbreakした事、Nintendo Switch用のディスアセンブラを書いたり、
解析したりエミュレータを作ったりしている事、そしてこれら作業が非常に労力のかかる事をMotivationとして、CyLabの研究テーマの一つである
脆弱性解析自動化技術の応用を考えている事。 実際にその走りとしていくつかのツール開発をして、未踏やGSoC、大学の研究等で評価された事などを挙げました。

ポイントを整理すると、「研究に参加したい動機」「受け入れ先機関の研究内容の理解度」「自力で研究を遂行できるだけの実力」を、自身の業績や活動、実際に世に出したモノを例示しながら説明しました。

4. その後

受け入れ許可を頂いた後はMaverick Woo先生とskypeで研究ミーティングを行いました。どういうテーマで研究を行いたいか、今CyLabが進めているプロジェクトの中で近いものはあるかなどです。
それから事務的な書類の手続きが始まりました。
まあここからは別に特筆する事もない単調な作業です。 研究ミーティングも余程ひどい事を言わない限り、面接では無いのでサクッと終わると思います。
あ、あと留学ファイナンシャルサポート制度も無事合格していました。

5. おわりに

以上です。 あれ、もう終わってしまった。正直めちゃくちゃ準備したとか、交渉したとか全然無く、気付いたらえ、行けるの?
という感じで決まっていたので意外と書くことが無かったです。これ本当に参考になるのか?

まあ言いたい事は、所詮受け入れてもらえるか否かを決めるのは先方の教員なので、ダメ元でレジュメなり送ってみても
良いと思います。勿論いきなり送るんじゃなくて、ある程度段階を踏む必要はありますが。

行きたい大学院が自分の所属大学と留学提携してなくても、こういう手段もあるので諦めずに行動を起こしてみると良いと思います。


あ、後英語に関してですがとりあえずリスニングとスピーキングさえ出来れば何とかなると思います。基本的に海外進出を考えている様な人は、論文を読んだり、研究者や有識者(僕の分野ならいわゆるハッカー)と議論したりはしていると思うので、英語の読み書きに関してはそんなに不安はないはずです。しかしリスニングに関しては普段中々鍛える事が出来ないので、
学会やカンファレンスの動画を見るなり、実際にF2Fで関係者と話すのが良いでしょうか。
スピーキングは割とオンラインでチャット等していると、実際に口で話すときも頭に文章が浮かぶようになるので何とかなると思います。

まあとにかく英語に関しては何とでもなります。
というわけで、意外となんとでもなったりするので、海外進出ぜひ視野に入れてみてください。